新しい学習方法や科学モデルを思いついても、手元の計算機では十分に試せないことがある。小さな実験で見込みがあっても、データや計算の規模を広げたときに同じように働くとは限らない。その段階を試せる設備があることは、基礎研究の進め方に影響する。
ニューヨーク州のEmpire AIは、大学や研究機関が共同で使うAI計算基盤だ。Simons Foundationの今回の公募は、この設備で基盤的な機械学習モデルを開発・利用し、物理学、生物学、神経科学、数学などの問題に取り組む研究を支援する。日本の研究者も、対象加盟機関の教員を代表者とする共同提案に、所定の資格を満たす追加の研究責任者として参加する経路がある。公式公募 ↗
計算量の制約で試せなかった発想に、どこまで取り組めるようになるだろうか。ただし、研究費と計算枠は別の手続きである。実際に使える設備と時間、海外からのアクセス、技術支援は、共同研究を始める段階で確かめたい。大学の外で研究している人や新興企業が、直接申し込める経路についても気になる。利用配分の案内 ↗
研究が進めば、その成果を事業につなげたいと思うこともあるだろう。計算機科学の成果は、モデルやソフトウェアとして利用者に届ける形を想像しやすく、研究の話をしていても事業性に考えが向く。それでも、事業化が見えたからといって、解いた問題の科学的価値が小さくなるわけではない。まだ解けていない問題を調べたいという動機と、使えるものを世に出したいという動機は、同じ研究の中にあってよいと思う。
実務上は、研究を公開して検証や発展を促すことと、知財やノウハウを保護することの調整が必要になる。Simonsの共通規程には商業化を想定した記述があり、一律禁止とは読めない。一方、研究データやソフトウェアなどの共有を求めている。どこまで公開し、誰がどの権利を持つのかは、個別の採択条件も含めて確認しておく必要がある。助成共通規程 ↗
日本の富岳には、産業利用や有償で成果を非公開にする制度がある。計算機の性能だけでなく、利用資格、成果の扱い、費用、支援の違いまで並べれば、自分の研究に合う制度を探しやすくなる。富岳の有償利用 ↗
今回の助成でどんな研究が選ばれるのか。その中に、計算資源を得たことで初めて試せた発想があるなら、結果だけでなく、何を試せるようになったのかも追っていきたい。
出典・参考資料
この版の作成時に確認した公開資料。リンク先はその後更新される場合があります。
- Utilizing the Full Power of Empire AI — Request for Applications ↗Simons Foundation · 2026-09-01
- 利用配分の案内 ↗利用配分の案内 · checked 2026-09-07
- 助成共通規程 ↗助成共通規程 · checked 2026-09-07
- 富岳の有償利用 ↗富岳の有償利用 · checked 2026-09-07
READER DISCUSSION
この話から、何を考えますか。
疑問、別の見方、確かめたい出典。短いひと言からでも歓迎します。
コメントは編集部の確認後に公開します。コメント・いいね・通報は18歳以上の方を対象とし、ログインが必要です。公開名は自由に決められます。常時の確認ではありません。 参加ルール
読者の声を読み込み中…