がんの治療は、薬が効かなくなったことを確認してから次の薬へ切り替えることが多い。では、画像に変化が表れるより先に、がんが薬に抵抗し始めた兆候を血液から捉えられたらどうだろう。その時点で治療を変えることに、患者の利益はあるのか。
Guardant Healthは10月8日、血液検査「Guardant360 CDx」が、乳がん治療薬camizestrantの使用対象を選ぶコンパニオン診断として、欧州の体外診断用医療機器規則に基づく認証を取得したと発表した。薬自体の欧州承認は7月であり、今回は検査側の認証が加わったニュースだ。Guardant Healthの発表 ↗
対象となるのは、ホルモン療法を受けている一部の進行乳がん患者である。アロマターゼ阻害薬は、エストロゲンの供給を減らしてがんの増殖を抑える。しかし、エストロゲン受容体を作るESR1遺伝子に特定の変異が生じると、エストロゲンが少ない環境でも受容体が働き、治療への抵抗性につながることがある。
血液検査が探すのは、こうした変異を持つがん由来のDNAだ。生まれつきの体質を調べる遺伝子検査ではなく、治療中にがんがどう変化しているかを見る。camizestrantはエストロゲン受容体に作用し、その分解を促す薬である。EMAの医薬品情報 ↗
この使い方を検証したSERENA-6試験では、治療中の患者を定期的に血液検査し、ESR1変異が現れたものの、画像ではまだ進行が確認されていない患者を選んだ。そのうえで、ホルモン療法をcamizestrantに切り替える群と、そのまま続ける群を比較した。併用していたCDK4/6阻害薬は継続している。原著論文 ↗
2026年6月の更新解析では、病気の進行または死亡までの期間の中央値は、切り替え群で16.8か月、継続群で9.2か月だった。血液中の変化を見つけ、治療を変更するという一連の判断に、臨床上の利益が示された。ただし、この数字はそのまま寿命が延びたことを意味するものではない。更新解析の発表 ↗
ここで興味深いのは、同じ薬を最初から使えば、誰にでも同じような優位性が得られるわけではないことだ。別のSERENA-4試験では、初回治療としてのcamizestrantとpalbociclibの併用は、比較対象に対して主要評価項目の優越性を示せなかった。患者集団も条件も異なるため、二つの試験だけで理由を特定することはできない。それでも、薬の評価には「何を使うか」に加え、「どの変化が現れた人に、いつ使うか」が重要であることが見えてくる。SERENA-4の結果 ↗
さらに、「早く切り替えると現在の治療を続けるよりよい」ことと、「同じ薬を画像上の進行後に使う場合より、早く使った方がよい」ことも、厳密には別の問いである。米国FDAは迅速承認に伴い、この投与時期の違いを直接比較する確認試験を求めている。FDAの承認書 ↗
事業として見ると、この検査は薬を使い始める前の一度きりの選別から、治療の途中で次の判断を支える役割へ広がっている。製薬企業にとっては、自社の薬が役立つ患者だけでなく、役立つ時点を見つける手段になる。検査企業にとっては、継続的な観測に需要が生まれる。
ただ、測る回数が増えること自体が価値なのではない。変化を見つけたときに何をすればよいかが決まり、その行動に利益があるから検査が必要になる。今回の検査と治療の組み合わせは、そこまで含めて開発する方向を示している。
出典・参考資料
この版の作成時に確認した公開資料。リンク先はその後更新される場合があります。
- Guardant360 CDx: European IVDR certification for camizestrant treatment selection ↗Guardant Health · 2026-10-08
- SERENA-6: camizestrant after detection of an ESR1 mutation ↗New England Journal of Medicine / PubMed · 2025-06-01
- Camizestrant accelerated approval letter and confirmatory requirements ↗US Food and Drug Administration · 2026-09-04
- SERENA-6 updated progression results ↗AstraZeneca · 2026-06-02
- Update on the SERENA-4 Phase III trial ↗AstraZeneca · 2026-09-11
- Etcamah: European public assessment information ↗European Medicines Agency ·
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