アストラゼネカは9月28日、Summit Therapeuticsへの20億ドルの出資と、抗がん剤の併用開発を発表した。狙いは、Summitが開発するivonescimabを、自社の複数の抗体薬物複合体(ADC)と組み合わせることにある。最初の対象は消化器がん向けのSone-Ve。さらに10月2日には、第一三共も加わり、Datrowayとの併用開発が発表された。アストラゼネカの発表 ↗、Datrowayとの共同開発 ↗

ADCは、抗体を使って細胞傷害性の薬物を届ける。一方、ivonescimabはPD-1とVEGFを標的とし、免疫応答と血管新生に働きかける。異なる作用を組み合わせ、治療成績を高めようという開発だ。

今回の特徴は、併用試験を一緒に行うことに加え、その相手へ大きな資本を入れた点にある。各社は自社薬の開発・販売権を維持しながら、試験薬と試験費用を分担する。相手の薬を買い取るのではなく、相手の開発が進むことで、自社の薬も伸びる関係をつくる。契約の概要 ↗

がん領域では、既に定着した開発方法

企業をまたぐ併用開発自体は、珍しいものではなくなっている。Regeneronは自社のPD-1阻害薬について、BioNTechとの協業に加え、12件を超える供給・臨床協業が進行中と説明している。一つの薬が、複数企業の候補薬を組み合わせる相手になっている。Regeneronの協業一覧 ↗

既に承認へ進んだ例もある。2026年6月、FDAはGileadのADCであるTrodelvyと、Merckの免疫チェックポイント阻害薬Keytrudaの併用を、一定のPD-L1陽性進行トリプルネガティブ乳がんの一次治療として承認した。Datroway側の開発は、ADCと免疫療法の組み合わせが実際の治療になり始めた市場で、どのような違いを出せるかという競争でもある。FDAの承認発表 ↗

がん以外では、組み合わせる目的も変わる

HIVでは、GileadのlenacapavirとMerckのislatravirを組み合わせ、週1回の経口治療を目指す共同開発が進む。ウイルスの異なる過程に作用する二剤の、長く効く性質を生かす計画だ。両社は試験だけでなく、共同開発・販売と収益の分担まで契約している。両社の契約発表 ↗

2026年6月には、既にウイルス量が抑制された患者を対象とする二つの第3相試験で、48週時点の主要評価項目について、毎日の既存治療に対する非劣性が報告された。ここで増やそうとしている価値は、治療効果だけでなく、服薬頻度を減らせることでもある。第3相試験の結果発表 ↗

イムリフィダーゼ(商品名Idefirix)は、既に体内にあるIgG抗体を切断する酵素薬だ。EUでは、ドナーに対する抗体が障害となり、腎移植を受けにくい特定の成人患者に、移植前の処置として使われている。抗体による拒絶反応を一時的に弱め、移植を可能にするための薬であり、移植後の通常の免疫抑制療法は別途必要になる。EMAの説明 ↗

抗AAV抗体だけを選んで切るわけではなく、感染防御に関わるIgGにも作用する。また、抗体は時間とともに再上昇する。遺伝子治療への応用は、この一時的な低抗体状態を利用して、AAVによる遺伝子導入を可能にしようとする試みだ。製品情報 ↗、遺伝子治療への応用開発 ↗

Sareptaとの契約では、Hansaは自社薬の売上に加え、その前処置によって投与可能になった遺伝子治療の売上からもロイヤルティを受ける設計を採った。治療本体を所有していなくても、治療を成立させる役割を、相手の売上につなげている。HansaとSareptaの契約 ↗

ただし、この開発が成功したわけではない。2025年に報告されたデュシェンヌ型筋ジストロフィーの3例では、抗体を減らして投与できた一方、導入した遺伝子によるタンパク質の発現は、他の試験より低かった。現在、Sareptaの試験一覧では当該試験は終了とされている。投与の障害を取り除けても、その先の効果が十分に得られるとは限らなかった。Hansaの報告 ↗、Sareptaの試験一覧 ↗

細胞治療と薬剤の組み合わせは、自己免疫疾患にも及んでいる。ArtivaはNK細胞製品候補AlloNKと抗CD20抗体rituximabを併用し、関節リウマチなどでB細胞の除去を狙う。抗体が標的を認識し、NK細胞がその排除を担うという役割分担だ。2026年5月には、併用をrituximab単独と比較する無作為化試験の計画が示された。これは治療技術の組み合わせの例であり、抗体メーカーとの共同事業を示すものではない。Artivaの開発計画 ↗

協業は続く。ただし、同じ形では広がらない

こうした開発が続く理由はある。抗体、核酸、細胞、送達技術のすべてについて、一社が最適な選択肢を持つことは難しい。組み合わせによって得たいものも、効き目の上乗せ、服薬回数の削減、投与対象の拡大など、それぞれ異なる。

そのため、協業の事業構造も一様ではない。自社薬をそれぞれ販売するのか、共同製品の収益を分けるのか、相手の売上からロイヤルティを受けるのか。科学的に何を補い合うかが、契約の違いにも表れる。

アストラゼネカの出資は、この補完関係を一つの試験で終わらせず、自社の複数の薬へ広げようとする選択と読める。相手の開発能力を支えることが、自社の開発余地を広げる。その関係に、20億ドルを投じたのである。

この版での次の確認点

併用と単独の比較結果、対象患者、薬剤別の権利、試験費用の分担、前処置に対するロイヤルティの実現条件。

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出典・参考資料

この版の作成時に確認した公開資料。リンク先はその後更新される場合があります。

  1. アストラゼネカの発表 ↗www.astrazeneca.com ·
  2. Datrowayとの共同開発 ↗smmttx.com ·
  3. Regeneronの協業一覧 ↗www.regeneron.com ·
  4. FDAの承認発表 ↗www.fda.gov ·
  5. 両社の契約発表 ↗www.gilead.com ·
  6. 第3相試験の結果発表 ↗investors.gilead.com ·
  7. EMAの説明 ↗www.ema.europa.eu ·
  8. 製品情報 ↗www.ema.europa.eu ·
  9. 遺伝子治療への応用開発 ↗www.hansabiopharma.com ·
  10. Hansaの報告 ↗www.hansabiopharma.com ·
  11. Sareptaの試験一覧 ↗www.sarepta.com ·
  12. Artivaの開発計画 ↗investors.artivabio.com ·

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